キャッチコピーとは、単純に「言いたいことを短い文章でまとめる」ことにあらず。
キャッチコピー(以下キャッチ)の話になるとよく、「伝えたいことをギュッとまとめるから大変よね!」とその苦労を労ってもらうことがあります。
ですが、ハッキリ言ってキャッチは、長い文章をまとめる、だけではありません。
キャッチ一本を生み出すために、ライターはどのような作業や思考をしているのか。わかりやすく掘り下げてご紹介します。
クリエイティブ・デビューした「R」社のこと
私が初めてクリエイティブのお仕事を始めたのが、某広告会社「R」の制作会社。
当時はインターネットがまだまだ普及しておらず、やっと海外旅行向け媒体がネット稼働し始めた頃。国内旅行媒体のメインは紙媒体でした。
私が担当していたのが記事風広告で、読者から見ると記事と間違えてつい読んでしまうような記事、ありますよね。
広告っぽさを排除しながらもあくまで広告(つまり読者のアクションを促す目的を持つ)と言うなかなか特殊な立ち位置でした。
ですからキャッチコピーの重要さは、常々教えられてきました。
有名な言葉のプロ、例えば「死ぬのが怖いから飼わないなんて、言わないで欲しい」で有名なコピーライター・児島玲子さんや、文章表現/コミュニケーションインストラクター・山田ズーニーさんなどを招いての講座や、社内でコピーコンテストを実施したり…。
ことあるごとに創造力をインスパイアするような機会も多くあったことは、今考えても贅沢だなぁと思います。
キャッチコピーは翻訳作業?
社内でコピーライティングを学ぶ際に、口酸っぱく言われていたのが「コピーライティングは翻訳作業」だよ、と。
ものごとをそのまま伝えても、響く人と響かない人がいます。当然ですよね。
でもそのものごとのある部分を、その特徴を探している人に伝えると、喜んで行動(買う、行く、食べるなど)に移すでしょう。それも当然ですよね。
例に出すと、露天風呂を貸切ることができる温泉宿があります。これがメリット。でもそのお風呂はとても小さいんです。これがデメリット。
もしこの情報をそのまま伝えるとどうでしょう。
「小さな露天風呂が貸切り可能」
なんだかあまり豊かな気分にはなりませんよね。
それならもっと広々した大浴場の露天風呂に入りに行くわ、となるかもしれません。
でも例えばこう言ってみてはどうでしょう。
「二人の距離が縮まる貸し切り時間」
もちろん露天風呂のビジュアル(写真)に入る想定のキャッチです。
少し趣が変わったと感じませんか。
こうなると例えば、一気に距離を縮めたい付き合いたてのカップルや、夫婦間の再熱を狙う旦那さん、普段あまり会えない不倫カップルの心に響く可能性が高くなります。
簡単に言うと、これが翻訳作業なのです。
情報をそのままではなく、伝えたい相手に向けた表現を考えること。
そしてもちろん考えるのは、相手だけではありません。
「誰に」「何を」「どう」伝えるか。
これがキャッチコピーを作る作業の要です。
ターゲット設定の重要性:「誰に」
「伝えたい相手」という言葉が出てきましたが、これを「ターゲット」と言います。
誰に伝えるかで、伝え方は大きく変わりますよね。
キャッチを考える際には、ターゲット像をかなり細かく設定します。
その人は男性か女性か。働いているのか、主婦なのか、どんな仕事で、食生活で、生活スタイルなのか、などなど。そうするとその人の悩みや課題、もしくはこうだったらいいなという理想が見えてきます。
そしてその人ならどんなときにこの雑誌を手に取り、ページをめくるだろうと、そこまで想定して言葉や表現を考えるのです。
そしてもちろん、そのターゲットはクライアントの魅力や強みが一番嬉しい人であるべきなのです。
広告を考えるとき、これも良く言われることですが、「読者とクライアントのマッチング作業」だと。
例えば高級で静かな時間が流れる料亭に、賑やかな団体や家族連れが押し寄せたら、果たしてお互いにとってそれは幸せな結末なのでしょうか、ということ。
だからこそ慎重なターゲット設定が必要なのです。
でも、よく「そんなにターゲットを絞ったら、ピンポイントでしか響かない」と不満そうなクライアントさんの声を聞きます。
ですが!よく考えてください、その人(ターゲット)となりが誰にでも想像できるほどリアルであれば、その人の周りの人だって二次ターゲットとなりうるのです。
例えば、日々育児に追われるお母さんがターゲットであれば、身近な旦那さまやママ友、彼女のお母さんなどが「彼女を誘おう、彼女に贈ろう」と購買行動に移すのです。
そしてこれは経験から言いますが、「誰でもいいから」や「皆に」など、広く浅くを求めて作られたコピーは結果、誰の心にも響かず行動に結びつかないのです!
だからひとりにでも刺されば、まず勝ち、なのです。
一番の強みを探す:「何を」
クライアントを持つとまず始まるのが、情報の棚卸です。私はこれをとても重要な作業だと考えています。
もちろんいい面ばかりではなく、メリット・デメリット両方の面からをどんどん上げていきます。
こうすることでこのクライアントの全貌が立体的に見えます。そうすることで同業種や競合(ライバル)との差別化が客観的にできるようにもなりますね。
棚卸しができたら、そのなかから設定したターゲットに響く内容を絞る。この内容こそが、「何を」になります。
表現をどうする:「どう」
伝える内容や相手が決れば、それをどう表現するか、が最終関門です。
これには視点を変えてみたり、何かに例えてみたりと色々とやり方があります。ここでは書き切れませんが…。笑
これもターゲット設定がしっかりできているからこそ、思いつく表現があります。まさに翻訳作業と言えますよね。
キャッチコピー制作のあれこれを、少しご紹介しました。
キャッチの世界は奥が深くて、私は大好きです!
ほかにも「よいコピー」の見極め方、「コンセプトメイキング」など、関連した内容も書いていく予定ですので、乞うご期待♡。