エシカルノマドの指南書

世界放浪からオーストラリアへ移住後、物書きを生業とすべく帰国。自然に沿った暮らしをテーマに発信、今はエシカルとノマドの両立を目指す日々です

素敵カフェでの「もったいない」経験で考える【エッセイ】

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時間を有意義に潰せるような、カフェやショップの少ない地元に、珍しく素敵なカフェを見つけました。それはライターとして、見開き2Pの原稿を書きたい!と思えるくらいの素敵さです。

 

寡黙な店主がひとりで経営する、こだわりのお店。それは聞かずとも店内を見まわせばわかります。

 

焙煎機を設置、店内で焙煎した豆を注文後に挽いて、1杯ずつハンドドリップで提供しています。焙煎コーナーのような一角があり、そこには豊富な種類の生豆が展示されていてお客はその生豆を選び、焙煎してもらったものを購入できる。しかも好みの焙煎度や挽き方を選べるという、完全オーダー焙煎だそう(この辺りは少し、調べました。笑。)!

外観からのアプローチもまるで隠れ家の入り口のようだし、コンクリート打ちっぱなしの店内は、無骨だけどコーヒー愛溢れる店主を表現しているようで、どこか温かみがある。

 

嬉しくて、行きつけにするぞ!と息巻いて通うこと数回。で、先日また行ってみたのです、例によって嬉々として。

 

この日も先客が数名いて、本を読んだり勉強したりと、皆が思い思いに過ごしています。ジャズが適度な音量でかかっているため、人が少なくても気まずくない、それも心地良さの理由でしょう。

 

私は店名の付いたコーヒーと食べてみたかったケーキのセットを。コーヒーはなみなみと注がれ、ソーサーにはチョコレートが2切れもちょこんと乗っています。そんな風にもてなされて、本を読みながら至極の時間を過ごしていました。

先客達は一人減り、二人減り…。私がまだ本を読んでいると、その店主、なんとお茶とお煎餅を持ってきてくれました。コーヒーと甘いものの後の、お茶と煎餅のサービス!なんという心遣い!笑。ここは素直に喜んで、いただきます。

 

すると、ここで新たな2組が入店。それが、ひとり客ではなく、数名ずつのグループでした。

するとこの店主、後から入ってきた方の2人組に「いらっしゃいませ」の代わりに「時間掛かるけどいいですか?」と挨拶したのです…!どのくらい掛かるか聞く2人組に対し、聞き取れないレベルの声でボソッと返事。そのままその2人組は、店を出てしまいました。

さらに、その前に入っていたグループにも注文を取りながら、「時間掛かるけどいいですか?」と切り返します。

 

これにはさすがに突っ込みそうになった!笑。「客は、あなたのペースでは来店しませんよ!」と。

 

正直に申し上げて、たった2組でキャパオーバーになり掛けている店主の、プロとしての器の小ささを垣間見、と同時に「いいんですよ、少しくらい待たせても!」と思わず横から声を掛けそうになりました。苦笑。

 

このお店はただ時間潰しで入る、駅前のコーヒーチェーンD店とは役割が違うんです。ちょっと特別な時間を持ちたくて、特別な気持ちでやって来るような、素敵なお店なんです。しかも1杯ずつ丁寧に淹れてくれているので、多少時間が掛かるのは、客側からしても想定内です。それを敢えて挨拶代わりに言われると、歓迎されていない印象を受けてしまい、もったいない。

だって、そんなはずないのに、です。長居するお客には、お茶とお煎餅をサービスするような、コーヒー豆を情熱で焙煎するような、そんな店主のお店なのに…。

 

ここで考えさせられるのは、

 

専門的かつ職人的なこだわりを追求することと、その商品を提供するときの感じの良さの、バランスについて。

 

例えば、職人気質な店主がやっている、ラーメン屋や回らないお寿司屋さんなんか、イメージしやすいのではないでしょうか。どれほど店主や寿司職人が無口でも、本当に美味しいものを提供しているから、そこそこ人が入る、というのがありますね。確かにそういう敷居の高さを好む人もいるでしょう。

 

でも私は思うのです。それでもやっぱり少しくらい味が落ちてもいいから、笑顔の料理人の手から作られた料理が、食べたい!

 

このカフェの話に戻すと、多少待たされてもいいから快く注文を受け、「待ってくれてありがとう!」と大らかにサーヴしてくれたらいいのに!と。

 

彼としては自分の店だから、好きなことを自分の力量だけで細々と…。と、考えているとしても理解できます。でも、求められるときにはそれを提供する、というのは結果自分のためにも世のためにもなるし、さらにはあらゆる意味でのビッグチャンスだと思うのです。

 

これ、このカフェを例に出しながら、自分にも置き換えながら鼓舞するように書いています!求められるときには、笑顔で喜んで提供しよう、と。気難しい職人気質なライターになり過ぎないように、と。苦笑。

 

それはこの日、素敵なカフェがお客を自らの手で追い出すような、もったいなさを目の当たりしたことで、得た教訓です。

でもお分かりいただけますよね、「もったいない」の裏にはいつも期待や希望がもれなく付いてくるのだ、ということを。

 

この日の出来事で、確かに少しテンションは落ちましたが。でもきっと、私はまたこの隠れ家的なカフェのドアを開けると思います。「時間掛かりますが…」と言われても「待ちます(ニコリ)。」と言って、トーストセットを頼むかも、しれません。